カナダとスカンジナビア半島について・・・・ (島村英紀)
カナダの北のほうにハドソン湾という大きな湾があります。ここには昔からイヌイットの人たちが住んでいるのですが、老人たちはハドソン湾の中に、新しい島がつぎつぎに生まれてきているのを見て、語りついでいるそうです。ここではいったいなにが起きているのでしょう。
ノルウェーとスウェーデンが乗っているスカンジナビア半島は、いままで何千年ものあいだずっと盛り上がってきています。この半島は日本よりずっと大きいのですが、その全体がすでに百メートルも盛り上がったのです。盛り上がる速さは少しすつ遅くなってきていますが、いまの速さは年に一センチ、つまり千年かっかて十メートル上がる速さです。つまり、カナダの北部やハドソン湾もやはり盛り上がってきているから、島が増えているのです。
これらの場所ではどんな事件が起こっているのでしょう。将来、火山でも噴火するのでしょうか。そうではありません。この謎は、岩が軟らかくないと解けません。
氷河時代、スカンジナビア半島やカナダの北部には、三千メートルも厚さのある氷河が乗っていました。そして一万年ほど前に地球は暖かくなり、氷河期が終っわて氷河は溶けてなくなりました。コンニャクの上に箸をおけばどうなるでしょう。コンニャクはへこみますね。箸をとれば、コンニャクはもとへもどります。つまりコンニャクがスカンジナビア半島とその下の岩で、箸が氷河なのです。
スカンジナビア半島はユーラシアプレートの上に乗っています。 そしてユーラシアプレートは、その下にあるマントルの上に乗っているのです。カナダも同じように北米プレートに乗っています。マントルはプレートの下から深さ二千九百キロまでつづいています。プレートはマントルよりも硬いものですが、コンニャクのような性質はマントルという部分の岩が強くもっているので、プレートもマントルにしたがって形が変わっているのです。
マントルをつくっている岩は、コンニャクと同じようにへこみ、またもとへもどります。ちがうことはただ一つ、へこむのにももとえもどるのにも地球の時間のスケールが必要なことなのです。いまスカンジナビア半島やカナダで起こっていることは、一万年ものあいだずっとつづいてきているのです。
地球は、このように昔の事件をおぼえていることがあるのです。地球科学の最前線のおもしろさの一つは、地球が記憶している昔の事件を探偵小説のように読みとることなのです。
動かざること大地のごとしという格言をしっているでしょう。しかし私たち地球科学者から見た地球の岩はまったくちがうものです。それはふつうに力をかけたときは硬くても、何前年も何万年も力をかけつづけたときには、岩はずっと軟らかいものになってしまうことなのです。つまり地球の歴史の時間のスケールから見たら、岩はごく軟らかいものなのです。
岩は、力を長いあいだかけつづければ、押せばへこむ、盛り上がっているものは崩れる、そればかりではありません。まるで水飴のように、ゆっくりながれることさえあるものなのです。マントルの岩は、とくんこの性質を強くもっているのです。
氷河が消えてしまったスカンジナビア半島とちがって、地球にはいま氷河におおわれているところがあります。南極大陸です。そこでの氷河の厚さを調べることができるようになり、氷河の下にある岩の地形がわかるようになりました。つまり南極大陸のほんとうの地図が描けるようになったのです。 小島 太一
0 件のコメント:
コメントを投稿