他人に教わることが重要だということは、助手時代に教授とのやり取りを通してあらためて気づかされた。このときも、いま思えば自分の頭で考えた経験のひとつである。
当時、教授から「つまらないことに腹を立てるな」とよく諭されたのだが、何度も同じことを言われているうちに、「あれ、おかしい」と思い始めたのだ。ある状況におかれた場合、釈迦やキリストのような聖者でない限り、腹は必ず立つものである。そう考えると、「腹を立てるな」というのは、「がまんしろ」という意味に等しいということだ。
この話には後日談がある。教授になった頃、同僚から「小宮山さんは若い人からいろいろ言われても、腹を立てないから偉い」と感心されたことがある。それに対してこう答えた。
「いや、そうじゃないんです。助手たちから、研究室の運営について嘴を突っ込まれると、私だって腹は立つ。でも、そこで一喝した途端、次から彼らは重要な情報を私の耳に入れなくなるでしょう。それでは私が“裸の王様”になってしまうので困る。腹は立ってもそれを表面に出さない。つまりは怒らないことにしているんですよ」と。
これは結構重要なことだと思っている。いま経営者や政治家など組織のトップの立場にある人で、現場の状態を正確に把握している人がどれだけいるだろうか。
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